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早期発達支援

 

 
 
 


1. そもそも「早期発達支援」って? なぜ重要なの?

 

  • 発達の特性(発達障がい)とは:
      • 生まれつきの脳機能の特性で、「社会的なコミュニケーション」や「他者との関わり」が少し苦手だったり、興味や関心に強い「こだわり」があったり、「受信の仕方」「学習方法」などにも苦手さが見受けられたりするのが特徴です。病気ではなく、個性(特性)の一つです。

 

  • 早期発達支援とは:
      • ASDなどの発達に特性がある子に対し、できるだけ早い時期から適切なサポート(療育)を行うことです。

 

  • なぜ「早期」が大事?:
      • 子どもの脳は、特に幼い時期にものすごい勢いで発達します(これを神経可塑性といいます)。
      • この「脳が変化しやすい」大切な時期に適切なサポートをすることで、コミュニケーション能力や社会性を伸ばし、将来の「生きづらさ」(不登校などの二次障がい)を予防できる可能性が高まるからです。
      • 薬で特性を治すのではなく、教育や福祉の力で「できること」を増やし、生活しやすくするのが目的です。

 
 
 


2. すべての始まり:「ロバース(Lovaas)研究」(1987年)

 

この分野で、世界に衝撃を与えた「伝説の研究」があります。

 

  • 何をした?:
      • ロバースさんという研究者が、ASDの幼い子どもたちを集め、2つのグループに分けました。
      • (1)超集中グループ: 週に40時間以上 (分かりやすくすると1日6時間以上) という、非常に密度の濃い行動療法(ABA)を実施。
      • (2)通常グループ: 週に10時間以下 (分かりやすくすると1日1時間だけ) の行動療法を実施

 

  • 結果は?:
      • 超集中グループのなんと47%(約半分)の子どもが、知的な遅れがなくなり、小学校の通常学級で勉強できるようになりました。

 

  • 発見と衝撃!:
      • 「ASDは治らない」と思われていた時代に、「早期に集中療育すれば、劇的に改善する可能性がある!」と証明した、歴史的な研究です。これがキッカケで、世界中で「ABA(応用行動分析)」に基づく早期療育が始まりました。

 
 
 


3. 次なる研究と対応「般化(はんか)」

 
 ロバース研究の「特訓」のように環境を整えた場所での学習(専門用語でDTTといいます)で完結するだけでは、「練習したことはできるようになる」一方で「練習したことを応用して使うことがまだ苦手」といった課題も見えてきました。
そこで、般化(はんか)の訓練も加えていくことで、練習した場所以外の日常の場面でも学習したスキルを使えるようになり、自発性、スキルの定着、スキルの幅を広げていくことを目指しました。これは、応用行動分析学(ABA)の中でも、より自然な生活場面での指導(専門用語でNETといいます)の取り組みに繋がっていきます。

 
 
 


4. 重要な4つのカギ

 
 このような取り組みから、効果的な支援のための特に重要な「4つのカギ」が見えてきました。
 

🔑 カギ1:「早期に集中した療育活動」

      • 早期の時期には、なるべく集中して療育活動の時間を設け、習慣として活動をすることが大切です。
※以下、低学年から利用いただき、成長と般化に合わせて調整する基準としている利用回数です
 
小学1年〜2年生 
 

 

週4〜

 

 

小学3年〜4年生 
 

 

週3〜4

 

 

小学5年〜6年生 
 

 

週2〜3

 

 

 
🔑 カギ2:「自発性」と「応用力(般化)」を育てる

      • 「やりたい!」を引き出す環境設定(自発性):
        • (例)ただ「自由に遊んでいいよ」というより、子どもが思わず手を伸ばしたくなるような魅力的なオモチャを準備する方が、自分から行動しやすくなります。
      • 「あともう少しの環境」で要求を引き出す(自発性):
        • (例)大好きなオモチャを「透明な開かない箱」に入れておき、子どもが「開けて」「ちょうだい」と自分から要求する状況を作ることで、自発的なコミュニケーションを育てます。
      • 子どもの「大好き」を利用する(応用力):
        • (例)電車が好きな子なら、電車のオモチャで数や色を教えます。興味があることだと、他の場面でも使いやすくなります。
      • いろんな場所で練習する(応用力):
        • (例)療育センターの部屋だけでなく、公園、お店、お家など、生活の場面で練習します。

🔑 カギ3:「適切に強化」し「スキルを定着(維持)」させる

      • 好ましくない行動は「徹底して消去」する:
        • 好ましくない行動(例:逃避行動、注目行動)が100回起きても、100回とも強化に繋がること(専門性なく受け入れる、構う、反応するなど)をしないことが重要です。一度でも強化すると、その行動はかえって増えてしまいます。
      • 良い行動は「時々強化」して維持する:
        • 逆に、一度覚えた良い行動は、毎回ほめるのではなく「時々」ほめる(部分強化)ことで、スキルが定着し、忘れにくくなります。
      • 行動の「理由(機能)」を考える:
        • 子どもが問題行動をするとき、必ず理由があります(注目されたい、嫌なことから逃げたい等)。その理由を満たせる「もっと良い方法」を教えることで、スキルが定着しやすくなります。

🔑 カギ4: 親御さんも一緒に取り組むことが超重要!

      • 分析した多くの研究で、「親御さんも一緒に取り組むこと」が子どもの成長に直結することが示されています。そこで親御さんもペアレント・トレーニングを通して一緒に取り組んで頂くことが大切です。
      • 専門家(セラピスト)が療育する時間より、親御さんと過ごす時間の方が圧倒的に長いからです。
      • 親御さんがABAの知識を学び、「お家での関わり方(ほめ方、対応の仕方)」が上手になることが、子どもの成長の最大のカギです。
      • 子供の行動の理解ができるようになることで、親御さんも不安やストレスなどの負担が軽減され、お互いに前向きなコミュニケーションが増える機会が多くなりやすくなります。